只今、2020年のゴールデンウィーク
新型コロナウイルス感染症が世界中に広がり大変なことになっています。
2020年3月には学校が閉鎖され様々な経済活動が自粛され始めました。
そして2020年4月に本邦史上初(ですよね?)の緊急事態宣言が発令
一気に経済活動が緊縮し倒産する中小企業もバタバタと増えてまいりました。
何年後かにこの記事見たら
「あー、そんなことあったねー」
ってなってるんでしょうか。。。
さて、新型コロナに感染したかどうかを検査する
PCR検査というものがあるのですが
今のところ然るべき機関が必要と判断した人のみ
PCR検査を受けています。
「希望する人全員にPCR検査を受けさせろ!」という
一部(かなり?)の世論の声もあり
また専門家?の中にも「PCR検査をバンバンすべき」という方もおり
ついには某巨大グループと傘下の企業が
「医療行為でも診断でもないけどPCR検査できます!」なんていう
サービスをローンチするまでに至りました。
(あ、私は当該サービスについて少なくとも現時点では否定的です。)
→結局、いろいろあって見送りにしたみたいです。(2020.05.03時点)
そこで、高校数学(いや、計算自体は中学数学か?)で理解できる内容で
検査の陽性・陰性と実際の罹患率(本当に病気に罹っているのか否か)を
出来る限り分かりやすい内容で説明したいと思います。
当記事の内容は筆者の考えに基づいて記載されています。
如何なる条件・状況においても正確性や有効性等を保証するものではありません。
あくまでご覧になった読者ご自身において判断・理解ください。
正確な情報は公的機関の報道・発表をご確認ください。
では手始めに簡単に言葉の説明をしたいと思います。
ある病気(以下、病気A)の検査(以下、検査X)について
「感度」とは…
病気Aに”確実に”罹患している人に検査Xをした場合、「陽性」と判定する確率
「特異度」とは…
病気Aに”確実に”罹患していない人に検査Xをした場合、「陰性」と判定する確率
「真陽性」とは…
検査Xで陽性と判定された人が病気Aに罹患していること
「偽陽性」とは…
検査Xで陽性と判定された人が病気Aに罹患していないこと
「真陰性」とは…
検査Xで陰性と判定された人が病気Aに罹患していないこと
「偽陰性」とは…
検査Xで陰性と判定された人が病気Aに罹患していること
もちろん100%の精度を出せる検査があればそれに越したことはないのですが
現実的には一定の割合で検査結果に誤りが生じます。
当記事では検査Xを新型コロナのPCR検査と読み替え
貴重な全量検査を行った自衛隊中央病院のレポートを参考に
新型コロナPCR検査の感度を70%として話を進めたいと思います。
特異度についてはPCR検査は精度が高いということですが
ここでは朝日新聞のサイトを参考に99%としたいと思います。
表にまとめるとこんな感じになります。
感度70%とは本当に新型コロナに感染している人に検査を行った場合
70%の人を正しく「陽性」と判定し、30%の人を誤って「陰性」と判定する性能の検査ということです。
特異度99%とは本当に新型コロナに感染していない人に検査を行った場合
99%の人を正しく「陰性」と判定し、1%の人を誤って「陽性」と判定する性能の検査ということです。
この前提を元に東京都にお住まいの方、全員を対象にPCR検査を行ったらどうなるかを
解説していきたいと思います。
さて、もう一つ必要な数字があります。
それは事前確率(医療だと検査前確率、というのかな)です。
計算を単純化するために東京都の人口を1000万人と仮定します。
2020年4月末の時点で検出されている東京都の新型コロナ感染者数は約4000人でした。
人口1万人あたり4人が感染者で感染率は0.04%となります。
当然、本当の感染者はもっともっといることでしょう。
仮に25倍いるとすると人口1万人あたり100人が感染者で感染率は1%となります。
ここでは事前確率(市中感染率)として1%を設定します。
人口1000万人都市(東京)において、事前確率(市中感染率)1%で全員に感度70%のPCR検査を実施した場合…
こんな感じになります。
事前確率(市中感染率)が1%の場合
検査結果が陽性になる人が16.9万人になりますが
本当に新型コロナに感染している人は約40%(7万人)となります。
陽性と判定された人(16.9万人)の内、約60%(9.9万人)の人は本当は新型コロナに感染していないのです。
これでは検査の意味が???となりますね。
それでは事前確率が10%の場合はどうなるでしょうか。
因みに毎年発生するインフルエンザは国内で1000万人程度感染するそうです。
凡そ国民の10%と想定して見ていただいてもよさそうですね。
事前確率が10%の場合
検査結果が陽性になる人が79万人になりますが
検査結果が陽性だったとき本当に新型コロナに感染している人は約90%(70万人)となります。
陽性と判定された人(79万人)の内、約10%(9万人)の人は本当は新型コロナに感染していません。
これくらいなら検査として妥当な感じがします。
PCR検査の感度が70%程度の場合
事前確率(医療の言葉でいえば検査前確率なのかな?)が
10%ぐらいあると、陽性判定としてはぐっと検査を実施する意味が
増してくるってことがご理解いただけましたでしょうか。
逆にいうと事前確率が1%程度だと
検査する意味が???、という結果になります。
事前確率が低い時に大量のPCR検査を行うことの懸念点をまとめてみます。
・割合としては少ないが実数としては多数の陽性者がでます。
受入態勢が整わないまま陽性者が大量に出ても対処のしようがありません。
・多数の陽性者の中には多数の擬陽性者が含まれます。
本来治療が不要な擬陽性者に有限の医療資源を費やすことになります。
また擬陽性者に生活上の多大な制限を強いることになります。
・陰性者の中には多数の偽陰性者が含まれます。
本当は感染しているのに陰性として判定されます。
家で大人しくしていていただけるとよいのですが
一定数は外に出てしまい新たな感染源となるでしょう。
さてここまでの解説をご覧いただいた結果
「それでは事前確率を高めるにはどうしたらいいのか」
という疑問が出てくる方もいらっしゃると思います。
ひとつは市中感染率が上がることです。
先の例で事前確率(市中感染率)1%と10%の違いを解説した通り
できれば避けたい状況ですが市中感染率が上がるということは
PCR検査の結果、陽性と判定された人が本当に感染している確率は上昇します。
もう一つ、検査対象を「感染の可能性が高い」を絞ることによって
事前確率を上げることができます。
おなじみのインフルエンザの検査を思い出してください。
・熱の有無
・家族にインフルエンザ感染者がいるか
などをお医者さんが確認した上でインフルエンザの検査を受けていると思います。
もちろんご本人が元気ピンピンでも
インフルエンザに感染している可能性はゼロではないのですが
元気ピンピンで病院に行って
「万一、インフルエンザだと困るので検査を受けたい」
とか言っても通常は断られますよね。
殆どの場合、無意味な検査になってしまうため
スクリーニングを行い検査対象者を絞りこむことで
事前確率を上げているのです。
国内の市中感染率がまだ低いと考えられている状況では
事前確率を高めるためにお医者さんや保健所の方は
症状や経過観察を経て「これは新型コロナの可能性があるかも」と思われる方に
絞ってPCR検査をしていたのですね。
さて、ゴールデンウイーク後半のさなか
緊急事態宣言の延長が検討されています。
感染が確認された当初と異なり
市中感染率は実はかなり高そうだということが分かってきました。
無症状や軽症者はホテルで待機する、といった受入態勢も整ってきたようです。
そろそろPCR検査の実施状況も変わってくるかも知れませんね。
以上、条件付き確率で検査の意味を解説してみました。
読者の皆様の理解の一助となれば幸いです。
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